日経平均とNYダウの相関が崩れた日 ― 成績悪化の理由を考えてみた
前回、自動売買化を検討しつつも何も決められていないという話を書きました。
その理由の一つとして挙げたのが、日経平均-NYダウ手法・TOPIX-S&P500手法の理論値バックテストが、2023年以降悪化しているという事実です。
今日は、その「なぜ」について、もう少し考えてみようと思います。
手法の前提を、あらためて振り返る
日経平均-NYダウ手法は、日経平均の日足が陽線か陰線かを見て、その日の夜のNYダウを売買するというシンプルな手法です。TOPIX-S&P500手法も、対象をTOPIXとS&P500に置き換えただけで、考え方は同じです。
つまりこの手法は、「その日の日本の地合いが、時間差を置いて米国に伝わる」という前提に立っています。順番に、素直に伝わっていく。そういう世界観です。この前提が崩れているのではないか、というのが今回考えたいことです。
金利差がなかった時代
2020年から2022年ごろにかけて、世界中の中央銀行がほぼゼロ金利という状況が続きました。日米の金利差もほとんどない。だから円を借りて何かに投資する、いわゆる円キャリートレードをする動機自体が、市場にほとんど存在しませんでした。
この時期は、為替や海外資金の思惑よりも、素直にその日の地合いが翌日へつながっていく。手法にとっては、比較的やりやすい環境だったのではないかと思います。
金利差が広がり、主役が交代した
ところがFRBが利上げを進める一方、日銀は超低金利を維持し続けました。結果として、日米の金利差は急速に拡大していきます。金利差が開けば、円を借りてドル資産で運用する円キャリートレードの魅力が増す。実需筋だけでなく、金利差そのものを狙う資金が、為替市場にも株式市場にも流れ込むようになりました。
「日本の地合いが、翌日の米国に伝わる」という単純な構図に、「金利差を狙う資金の出入り」という、もう一つの大きな要因が重なってきたわけです。時期としても、ちょうど2023年前後から、この金利差はかなり意識されるようになっていました。
2024年3月、日銀がマイナス金利を解除
2024年3月、日銀は17年ぶりとなる利上げに踏み切り、マイナス金利政策を解除しました。金融政策そのもののレジームが変わった、大きな節目です。ここから先は、金利差そのものがニュースになる場面が増えていきます。
2024年8月5日、まさかの結果
この一連の流れの中で、象徴的な出来事として真っ先に思い浮かぶのが、2024年8月5日です。日銀の追加利上げ観測と円高が重なり、円キャリートレードが一斉に巻き戻された日。日経平均は前週末比で過去最大となる下げ幅を記録し、世に「令和ブラックマンデー」と呼ばれています。
正直に言うと、この記事を書き始めたとき、私はこの日のことを「自分の手法にとっても、最悪の一日だったはずだ」と思い込んでいました。あれだけの暴落があったのだから、手法の成績にも当然大きな傷がついているだろう、と。
ところが、実際に8月の取引記録を見返してみたら、様子が違いました。8月5日のエントリー分の損益は、日経平均-NYダウ手法が-1,790円、TOPIX-S&P500手法が-7,095円。たしかに負けてはいますが、8月の中で見ると、最大の損失日はどちらの手法も8月7日で、8月5日はそれより小さい損失にとどまっています。しかも8月全体で見ると、日経平均-NYダウ手法は11勝10敗で+19,200円、TOPIX-S&P500手法は13勝8敗で+20,740円と、どちらも月トータルではプラスで着地していました。
思い込みで記事を書かなくて良かったと、正直ほっとしています。
なぜ、動じなかったのか
なぜ、あれだけの暴落の日でも、手法は取り乱さなかったのでしょうか。理由は、この手法が裁量ではなく、ルールベースだからだと思います。
その日どれだけ世間が「令和ブラックマンデー」と騒いでいようと、手法がやることは変わりません。日経平均の日足が陽線か陰線か、それだけを見て、決められた通りに売買する。もし裁量でその日の値動きを見ながら判断していたら、あの乱高下の中で握力を試されていたかもしれません。ですが、ルールに従うだけなら、そもそも動じようがない。機械的であることの強さを、あらためて感じた出来事でした。
では、本当は何が効いているのか
一日の暴落では、成績悪化を説明できない。だとすると、やはり効いているのは、もっと緩やかで、しかし根本的な変化の方なのだと思います。金利差というレジームそのものが変わり、円キャリートレードが市場の主役の一角を占めるようになった。この構造変化が、派手な事件よりもずっと静かに、手法の前提を崩し続けているのではないでしょうか。
派手なニュースの日は、身構えることができます。厄介なのは、むしろ気づかないうちに進んでいく構造の変化の方なのかもしれません。
おわりに
今回、記事を書く前に実際のトレード記録を見返してよかったと思っています。
思い込みだけで「あの暴落が原因だ」と書いていたら、実態とは違う話になるところでした。
数字で確かめることの大切さを、あらためて実感した回でもあります。
金利差や円キャリートレードの影響については、まだ仮説の域を出ません。
もう少し長い期間のデータを見返しながら、引き続き考えていきたいと思います。

